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2024/02/29 12:06

こんにちは、MAH+(まぁ)です。
全3話でお送りしているNacori Lucori の牧草物語。
本日は最終話となります。
牧草事業を始めたら、自分の言葉で書こうと思っていたこと、それが今回のお話です。
なこるこの出会いと別れ、みんなに知ってもらいたいこと、そして牧草に託す願い…
手前勝手な作文でどうにも恐縮ですが、最後までお付き合い願えると幸いです。
ルーラと旅した時間
ルーラとともに関東の大地に降り立ったのは、今からちょうど1年前。2023年2月のことでした。
当時、親交のあった、きなちゃん、珀くん、シロンたん。初めて顔を合わせたルーラは、どこか緊張しているようで、気づけば我が物顔で、きなちゃんのどるみー(うさちゃん用のお布団)に寝そべっていて、微笑ましかったことを思い出します。

ルーラ(ホーランドロップの女の子)
ルーラは先天性の病気(巨大結腸症)を患っていましたが、このときはまだその事実に気がついていませんでした。
病気については、なないろちゃんがもしかしたらと気づいてくれて、その後紹介してもらったエキゾチックアニマル専門の動物病院で、巨大結腸症であると診断されました。
当時、インスタグラムを見てくださっていた方はご存知かもしれませんが、毎週末、とあるエンターテインメント企画で、ルーラは主人公として異世界を冒険していました。
この冒険は、インスタグラムのストーリーズの機能を使ってお友達と一緒に旅をするというもの。旅の目的は、伝説の牧草を探すこと。このアイデアやサブタイトルは、仲良しのうさ友さんが考えてくれたものでした。
当時、なないろちゃんはこの企画の物語デザイナーを務めていました。

伝説の牧草を探す旅に出るルーラ
関東へ来て、3ヶ月。
ルーラと出会ってから5年と4ヶ月。
ルーラはその生涯を終えました。5歳半でした。
ルーラが虹の橋を渡ってしばらくした頃、なないろちゃんがルーラはチャーリーだと教えてくれました。
チャーリー?
聞きなれない言葉でしたが、その話は僕の心の奥にある何かを刺激するものでした。
先天性の遺伝子疾患を持つ子たちがいるという
うさぎには様々な毛色や柄があります。
単色の子もいれば、ぶち柄の子もいて、その個性的な容姿を愛する人は少なくないと思います。
僕もそんな一人です。
チャーリーというのは、色のマーキングパターンが非常に少ないうさぎのこと。
医学的にはEn遺伝子を二つ持つホモ接合体のぶち柄うさぎを言います。
チャーリーには以下のような特徴があるそうです。
・スポット柄
・目の模様
・折れた背骨
・鼻の蝶模様が壊れる
わかりやすく言うと、ホワイトの毛色をしたぶち柄(ブロークン)で、体の模様が極端に少ない子(柄の比率が10%以下)
カラーが耳や目の周りに現れ、鼻の蝶模様がつながっていないなどが印になるようです。
チャーリーという呼び名は、鼻の横にできる柄がチャーリー・チャップリンのヒゲに似ていることが由来だそう。
このEn/En遺伝子を持つ子は、先天的に腸の神経に異常が見られ、巨大結腸症を発症する可能性が高いことがわかっています(実際の発生メカニズムは完全には解明されていないそうで、子宮内環境によるものなのか、遺伝的なものなのか、現在も研究が進められているようです。尚、柄が少ない=全てチャーリーというわけではありません。また柄が少ない子が全て病気を発症するわけでもありません)
チャーリーは、ブロークン同士を掛け合わせることで、出生確率が高まります。
ブロークンは人気の柄ですが、母親と父親、どちらもブロークンである場合、生まれた子の25%はチャーリーになる可能性があります。
ルーラの特徴的なお鼻の模様は、ルーラのトレンドマークでもあり、たくさんの人に愛してもらえたチャームポイントでした。それが、まさかこんな可能性を抱えていたなんて…

たくさんの人に愛された髭模様
巨大結腸症(別名:メガコロン)とは
海外の論文には、チャーリーの遺伝子を持つ15羽のうさぎを調べたところ、15羽全てにメガコロンが見られたと書かれているほど高確率で発症の恐れがある遺伝子疾患です。
色素細胞を減らす遺伝子が腸の神経細胞まで減らしてしまい、うまく水分を吸収できず、ひどい便秘や腹痛を伴う病気で、若いうちに発症することが多く、年齢と共に悪化するため、短命とされます。
(発症すると、これを完治する方法は今のところありません。病気と付き合っていくしかないのです)
この病気を見分ける方法としては、とにかく便を見ることです。
メガコロンを発症したうさぎは、便に異常が出ます。
通常、うさぎは金色の乾いた球体のうんちをします。ですが、メガコロンの子は、便の形が巨大で球体もいびつです。便秘のときは便が出づらく、小さなかけらのような便しか出なかったり、床にねっとり貼りつくような多量の便を出すこともあります。

すのこに貼り付いた粘性の便
ブリードの都合で生まれるチャーリーも
単色(ソリッド)とぶち柄(ブロークン)、それぞれの交配で生まれる子の色は変わります。
①親(ソリッド)× 親(ソリッド)
▼
子供(ソリッド:100%)

②親(ソリッド)× 親(ブロークン)
▼
子供(ソリッド :50%)
子供(ブロークン:50%)

③親(ブロークン)× 親(ブロークン)
▼
子供(ブロークン:50%)
子供(ソリッド :25%)
子供(チャーリー:25%)

④親(ソリッド)× 親(チャーリー)
▼
子供(ブロークン:100%)

⑤親(チャーリー)× 親(チャーリー)
▼
子供(チャーリー:100%)

ブロークンは人気があり、とりわけ綺麗なブロークン柄は高い需要があります。
このブロークンをたくさん産ませるには、④の組み合わせというわけです。
つまり、③ブロークン同士の掛け合わせでチャーリーが生まれたら、④ソリッドとチャーリーを掛け合わせることで効率よくブロークンの子を産ませることができるのです。
ですが、こんな理由でチャーリーの子が誕生させられてるのだとしたら…
そして、その子達が苦しみながら短い一生を終えるのだとしたら…
無用なブロークン同士の交配を、正当化する理由にはなりません。
まずは知ることが大切
巨大結腸症とチャーリーの関連性は、海外では古くから議論されているものの、現在でもまだまだ一般的だとは言えません。それは身を以て体験済みでもあります。
ルーラは2歳から3歳にかけて、便の調子が悪いことが増えました。
当時、通っていた動物病院では原因がわからず、複数回、便を持参しましたがメガコロンの可能性すら話にあがることはありませんでした。
これはその獣医師が悪いという話ではありません。それくらい、まだうさぎの病気について、一般的にはなっていないということなのでしょう。
現在も、ルーラと同じように苦しんでいるうさちゃんがいるかもしれません。私と同じように、病院に通いながらも原因がわからず、悩んでいる家族がいるかもしれません。だから、まずは知ってほしい。この病気を完治することはできなくても、正しい付き合い方を探す手がかりにはなるはずだから。

人は経験を受け継ぐことができる
巨大結腸症(メガコロン)を発症したら
メガコロンは、腸から栄養をうまく吸収できません。そのため、普段の食事には注意を払う必要があります。
まずは普段から、うんちの状態を観察するようにしましょう。
うさちゃんが金色のまるいうんちをしていたら、それは幸せの証です。
金色のうんちはよく見ると、牧草の繊維質で覆われているのがわかります。
牧草は葉だけでなく、茎を食べることも大事なんです(茎は消化吸収されませんが、腸内をよく動かし、うんちを綺麗にまとめて外に出す役割をしてくれます)
また、おやつや果物の過剰摂取は控えた方がいいでしょう。
おやつをあげると喜ぶので、ついついあげたくなりますが、巨大結腸症の子は腸を動かす機能がうまく働かないため、糖分の過剰摂取は便秘の原因になってしまいます。
ルーラのときは、毎日うんちをしてくれるだけで、すごく嬉しかったです。
うんちが出なかったり、ねっとりお尻周りに貼り付いてしまうこともあって、洗面台でお尻を洗うというのが数日続くこともありました。
とにかく、毎日しっかりと様子を見てあげること。
そして、かかりつけのお医者さんと病気の可能性について話し合い、その子にあった生活を送らせてあげることが、家族のできる最愛の方法だと思います。

一緒に過ごすだけでしあわせだもんね
どうすればバランスよく牧草を食べてくれるか
ルーラはよく牧草を食べる子でした。
それでも便に問題がでることが多く、これは病気である以上は仕方がないことなのかもしれません。
うさちゃんにとって、病気であるかどうかを問わず、高繊維質で良質な食事を摂ることは、健康管理の第一歩。まずは仔うさぎから老齢うさぎまで、その子にとって食べやすい牧草が異なることを理解しましょう。
例えば、うちの場合、ホーランドロップのきな子とシロンは長くて硬めの牧草を好んで食べます。
品種でいうと、アメリカ産スーパープレミアムホースチモシーの一番刈り、シングルプレス。
食べ方も豪快で、とにかく掘り出しては勢いよくチモチモ。
長い茎も構わずチモチモ…
牧草の束に顔を突っ込んだまま、延々とチモチモチモチモ…笑
と、こんな具合。
ところが、ネザーランドドワーフの珀はそうではありません。
珀は、いつも周りの様子を伺っていて、食べる時も注意することを忘れません。
そのため、きな子やシロンのように牧草に顔をつっこんだままチモチモし続けることがなく、牧草を咥えたら、すぐさま頭をあげて、周りを警戒しながらチモチモしています。
長時間、チモシーを食べ続けるより、少し食べては移動して、安全であることを確認しては、また戻って食べる、というのを繰り返します。
なので、長い牧草より短めの牧草を好む様子が見られます。
こうした様子を観察していると、うさちゃんの嗜好性は必ずしも牧草の質だけで決まるのではないと思っています。珀のように警戒心が強い子は、食事をしている時が一番無防備であることを知っているのでしょう。
なので、食べるのに時間のかかる長い牧草よりも、短くてすぐに食べきれるサイズを好むのではないでしょうか。お家の中は安全なのですが、本能がそうさせるのかもしれません。それも一つの個性です。
その子の個性に合う牧草を見つけてあげるのも、うさぎと暮らす楽しみの一つだと思います。

硬めのチモシーを好んでよく食べたルーラ
なこるこ冒険の旅:伝説の牧草を探して
ルーラがお空に旅立ってから、心に空いた穴は後悔と未来への不安で満ちていました。
あのとき、違う行動をしていたら、ルーラは元気になれたんじゃないだろうか、そんなことが頭をよぎっては消える日々。
そんな自分を救い出してくれたのも、なないろちゃんでした。
最初は厳しくも喝を、そしてたくさんのルーラの絵を描いて渡してくれました。

キャンバスに描かれた愛らしい表情
ルーラとともに過ごした時間。
これをずっと残し続けたい。
そんなことを思いながら過ごしていたある日。うさちゃんのご飯をあげようと、当時購入した10kgの牧草を箱から取り出していると、腕にミミズ腫れのような傷を見つけました。牧草のアレルギー反応であることはすぐわかりました(過去にも出たことがあったからです)
同じように牧草アレルギーで困っている人って多いんじゃないかな。
そんな話をなないろちゃんとしたことを覚えています。
牧草に触れる時間を短くしたり、牧草に触れる部分を最小限に抑えられたら、牧草アレルギーがある人も少し楽にならないかな。
例えば、袋から取り出すとき、あらかじめ揃って入っていたら…片手で一掴みしやすい状態で入っていたら…粉が舞わないように徹底的に粉塵を除去していたら…
そんなアイデアを話すと、なないろちゃんがあっという間に牧草を取り扱う会社にコンタクトを取ってくれて、運命的な出会いをもたらしてくれたのです。
ルーラが異世界で探していた伝説の牧草。
もしかしたら、ルーラはこんな未来を授けるために、私たちをここまで導いてくれたんじゃないかな。
そんなことを、なないろちゃんや、うさ友さんが、言ってくれました。
そう思うと「牧草探しの旅の続きは任せたよ」と、ルーラが言っている気がして…
これが今日のNacori Lucori の理念に繋がったのです。
Nacori Lucori の理念
■ 自然
自然の恵みをいただき
■ 感謝
感謝の心をもって
■ 再生
再生を祈る
■ 共存
地球に生きる全ての生物がともに暮らせること
■ 幸運
幸せは自分の中にある

5つの思いを込めた葉っぱを見上げるなこりとるこり
今日もまた、Nacori Lucori のアトリエで牧草をふるいながら、きっと側にはルーラが舞い降りていて、袋詰めをするその側で、様子を見守ってくれていることでしょう。
大丈夫、しっかりやるよ。
待ってくれている人がたくさんいるから。
ね、ルーラ。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。
私を支えてくださる多くのお客さまに、心より深く感謝申し上げます。
そして、この牧草物語を、ここまで導いてくれた恩人であるなないろちゃんと、ルーラに捧げます。
MAH+(まぁ)